秒速5センチメートルの旅の終わり~映画、小説、漫画の総括をします。ネタバレあり

映画「秒速5センチメートル」に衝撃を受け




どう解釈していいのかをめぐり旅をしてきました。

1.映画「秒速5センチメートル」に釘付けになった ネタバレ感想
2.マンガから読み解く、映画「秒速5センチメートル」 ネタバレ解説
3.小説one more sideから読み解く、映画「秒速5センチメートル」 ネタバレ解説
4.新海誠監督のインタビューから考える映画「秒速5センチメートル」 ネタバレあり
5.新海誠の小説から読み解く「秒速5センチメートル」ネタバレ解説
今 → 6.秒速5センチメートルの旅の終わり~映画、小説、漫画の総括をします。ネタバレあり


秒速シリーズは今回で最後です。
もしも映画をまだ見てなくて新海監督の作品に興味があれば、映画を見たほうがいいですし、
映画を見てもやもやしているなら小説版をおすすめします。これで謎は解けます。


漫画版は読むと若干足りない部分もあるかなと思いますが、そちらを読んでもなるほどなとすっきりすると思います。
「one more side」はおすすめではありません。


では、以下、ネタバレありで、小説版、漫画版、one more side、映画版の総括します。


1.小説版

この新海版が公式の解釈なんですよね。だから、映画でもやもやした人はこれを見るべきです。


貴樹の葛藤は明里への執着ではなく、居場所がない孤独感であったり、1人で生き抜く強さの欲したりが根本であると思います。


それが映画では描写されなかったので、視聴者が自分自身の体験として「失恋体験」を思い出し、「あの人と再会出来たら」と心を乱されるわけです。

小学校時代の貴樹は転勤族ゆえの周囲への怖さがあったけど、明里と居場所を見つけています。
だからこそ、心地良く心穏やかな日々が送れているわけです。

種子島に行くと、また根無し草になり自分の居場所探しをして乾いていきます。
明里のことも忘れます。
大学生になると、他人と向き合おうと頑張りますが、どこかうまくいきません。

その原因もわからなくて、、、仕事もがうまく行かなくなり、水野理紗という大切な人も失い、ようやく自分が居場所を探していて、「大丈夫だよ」って言ってもらいたい想いに気づき、過去の明里に祝福されて浮上できます。


踏切で明里とすれ違うことに特に意味はない気がします。

明里とすれ違えるだけでも奇跡だと彼は感じていますし、それ以前に彼はもう浮上しているわけです。
居場所を与えてくれた彼女に感謝しながら生きていきます。
が、別の人と今後も恋愛して、そして、幸せに生きていくと思います。



2.漫画版

漫画版では、明里の話が少しだけ入ったり、理沙の部分がオリジナルであったりと、ずいぶんと様相が違います。


漫画版は、「大きな恋愛のトラウマ」がテーマじゃないかと思います。
清家さんの捉える「秒速5センチメートル」の世界と考えると納得がいきます。

中1の貴樹は明里に恋をし、この気持ちを永遠に持ち続ける、想い続けると誓うわけですが、高校時代に挫折をしてしまいます。
それは自分を縛る亡霊となり、過去に囚われながら生きていくことになり、「余裕がない」発言につながります。

お互いが深く通じあっていたわけで、それが文章では表現できないので、自然と文通も途絶えてしまいます。
あの世界の真実にふれたくて、、、囚われてしまったとも言えます。

その思いは社会人になっても続き、明里と再会はできないとわかっているけれど、他の人と将来を考えるなんてできないとも思ってます。
だから、恋愛においては心がこもっておらず、女性を傷つけてしまいます。

そんな彼を救ってくれたのが水野理紗で、捨て身のアタックで、彼がトラウマとなっている明里との想い出と向き合う決意をくれ、明里と出会った岩船に向かいます。
結果的に理紗とは破局してしまいますが、彼は前向きに生きるきっかけを与えてくれました。


退職後に再就職したのは宇宙関連の会社。
子どもの頃の夢は宇宙飛行士、種子島でロケットと出会う、といったものが伏線と効いてきています。

そして、明里と踏切ですれ違う(漫画では本物です)
この瞬間に、中1の明里が出てきて「もう大丈夫」と彼に言います。
彼はすれ違った明里に「明里は?」と問いかけるわけです。

しかしながら、明里はそのまま通りすぎて出会えない。
けど、彼は笑みを浮かべます。

ここはかなり想像ですが、
明里とすれ違うことによって、彼は過去の明里から「大丈夫だよ」と祝福され、彼の思い込みは必要ないと悟った。
彼の気がかりだった明里は、立ち去ったことで明里は過去にとらわれていないことを知り彼は安堵した。
これで心の穴が埋まった


と考えています。
漫画では踏切での出会いは必須だったのです。
だからこそ、その後に、幼い明里が「ばいばい」とばかりに手を振っている描写になっています。

ちなみに、最終話は花苗の話ですが、個人的には暗くなるのでいらないですね。


3.one more side版

個人的には問題作であり、かなりの異訳であるone more side。


もうパラレルワールドと捉えなきゃ意味不明になります。
360ページぐらいの太い本になり、細かい心理描写がなされていて、かなりこってり。

この版では、貴樹と明里はお互いが半身同士、というような設定です。
だからこそ、お互いに何でもわかりあえて、いつも一緒にいたわけです。
離れ離れになるのはとてつもなく苦しいわけです。

明里はすごく生きづらさを感じる人で中学生活が手一杯。
2人が再会したときに、貴樹から力を半分わけてもらい、明里はその力のおかげでその後は順調な人生を送ります。


力を与えてしまった貴樹は、幽体離脱のようなぼうっとした人間となり、明里と垣間見た世界の真実の虜になり、「僕が求めているものは言葉では表現できないものだ」と花苗の告白を拒絶します。

居場所がないと小説版では出てきますが、彼はその居場所は宇宙ロケットが目指す深宇宙にあると考えます。
度々、その理想郷の夢を見るわけです。興味が現実世界にはなかったのです。

だからこそ、その後、彼は恋愛をしますが、熱心ではありません。
水野理紗と付き合ったのもさえ、彼女の持つ影の秘密が知りたかったのです。
もはや感情を喪失した欠陥人間のようです



仕事を辞めた彼が発見するのは花苗と見た宇宙ロケットが冥王星にたどり着いたことを知る。
あのロケットは自分だ、と投影していたわけです。
その時に彼は悟ります。

今、自分はここにたどり着いたのだと。
感動が全身を包み込んだ。
彼が欲しかった力がある。今なら何でもできると。

・・・全く理解できない展開なのですが、他の小説や漫画から補完すると、
行く宛もない旅を続けていくと思っていた自分は実は大人になった今現在に辿り着いたと悟って、それが理想郷ではないけれど、自分の居場所だと感じ、孤独ではないことを理解したのかもしれません

本当によくわかりません。
で、これで生きる力を得た彼は、フリーになり、4月に踏切で明里とすれ違います。
そのときに、中1の出会った時にあげた半身の力を、明里から返してもらいます

本人同士はそれと気づきませんが、彼は不思議な力が身体から湧き上がってきて、フッと微笑むわけです。

・・・そして、読みながら、意味不明と苦笑いをするわけです。。。


4.映画

小説版を読んだのであれば、貴樹の人生において明里は高校時代からもう用はないのです。
もう忘れてしまった元カノなんです。
高校時代の葛藤は、居場所のなさや孤独感の葛藤。

社会人になっても、うまくいかないのは、自分の居場所が見つからないと思い込んでいるからです。
自分を省みた時に居場所がきちんとことに気づき、そこから彼は自信を持って、自分なりに生きていけるようになります。


そんな話ですが、それを映画でやっても面白くないので、全部を説明せず部分的な描写によって次のように解釈させるわけです。



中1に再会し、貴樹は明里に永遠に想い続けることを誓う。
高校時代のメールは明里と付き合っていることを匂わせるが、実は違う。
でも、彼の虚ろな反応は「あの約束を守って思い続けている」と思わせる。

社会人になり、理紗に「1cmしか近づけなかった」と言わせ、破局するわけですから「まだ明里を想い続けている」と期待させます。
明里は結婚間近であり、貴樹を思い出す。
そして、運命の踏切で明里とすれ違う。

もしかして、略奪愛か!!

なんてね、明里はもうすでに結婚してます・・・


こういう演出をすると、テーマが「貴樹と明里」であるわけで、一生に一度の大恋愛のように映ります。
見る側は、説明不足なところを自身の経験で補足するので、ダメージを受けたり、感情を激しく揺さぶられたりします。


小説版のあとがきで、新海監督は、映像は映像の強み、文章は文章の強みがあると書いてます。
実力派の映画監督ですから、映像の強みを生かして、視聴者の感情の揺さぶりをかけることに見事に成功しています。
明里は全然関係ないんです。


終わりに

短編映画でここまで感情を揺さぶり、シリーズ物を調べさせた新海監督はすごいとしかいいようがありませんね。
もうそれだけです。
漫画や小説では、各人が考える「秒速5センチメートル」が展開されているわけで、映画を見たぼくらも同じように独自の「秒速5センチメートル」を展開しているともいえます。

自分的には全ての謎が解けた気がして、すっきりし、違う価値や見方ができたのでとても満足できる旅でした。
その一助になれば幸いです。復習は下記リンクより。では!

1.映画「秒速5センチメートル」に釘付けになった ネタバレ感想
2.マンガから読み解く、映画「秒速5センチメートル」 ネタバレ解説
3.小説one more sideから読み解く、映画「秒速5センチメートル」 ネタバレ解説
4.新海誠監督のインタビューから考える映画「秒速5センチメートル」 ネタバレあり
5.新海誠の小説から読み解く「秒速5センチメートル」ネタバレ解説
6.秒速5センチメートルの旅の終わり~映画、小説、漫画の総括をします。ネタバレあり

コメント

  1. まごころ より:

    お疲れ様です。大変素晴らしい考察を有難う御座いました。私はつい最近、「君の名は。」を見たので、なんとなく秒速の方の見たくなって見返したのですが、これが以前見た時よりずっしりと心に圧し掛かるんですね。心臓を鷲掴みされたような。。 どうして、どうして、、、、こんなに辛い事があっていいのかと。。。
    しかし、ここのブログに出会い救われました。有難う御座いました。

    • Mori より:

      おはようございます。
      秒速は・・・本当にやられますね・・・。
      君の名は。に関しては、大衆受けするものを作ったんだなという形なので、安易に秒速を見るとダメージ喰らいますね。
      なんとかなったらなによりです!