小説one more sideから読み解く、映画「秒速5センチメートル」 ネタバレ解説

記事を公開してから気づいたんですが、あれ・・・最初の文章を書いていない、、、ということで、急遽書きます。
発端はHuluで映画「秒速5センチメートル」を見たことに始まります。

Huluで新たに配信された映画「秒速5センチメートル」を見ました。 監督は新海誠さん。Huluで同じく配信された「言の葉の庭」...

で、
圧倒的なもやもや感が残ったので
、マンガを読んだわけです。
Huluにて新海誠監督の映画「秒速5センチメートル」を見ました。 そして、猛烈に残るもやもや感 悶々と残る思いを解消...

ここでかなりの部分が解消されて、旅はほぼ終わったんですが、明里目線の話が知りたいと思って、小説版を手に取りました。


左が新海監督の書いたもの。これがベーシックです。
今回読んだのは右側のone more side。こちらは本編にはない視点で物語が書かれているらしいとのことで、読みました。
内容量もかなり厚かったです。

さて、どうだったでしょうか。



1.桜花抄

この章は、篠原明里が貴樹に書いたラブレターを発見した時に思い出した、として始まります。
あのラブレターはどうしても渡しておきたかったと。

秒速5センチメートルの映画やマンガでは描かれることがなかった、ある意味では神格化された明里の回顧録。


明里は言ってしまえば、クラスの中で目立たず、自分の意見を言えず、下を向いて生きている女子だった。
残酷な小学生からはからかいやいじめの対象になっており、生きにくさを感じて、人に対して恐怖を抱きながら辛い日々を送っていた。
転勤族なのもあり、拍車をかけていた。

東京に転勤し、恐怖に震える明里を貴樹の「大丈夫」という一言が彼女を救ってくれて、すっと背中を伸ばせるようになった。

他人への恐怖は続いたが、理解者である貴樹がいるおかげで、穏やかな日々を送ることができた。

明里が貴樹に言う「桜の花が落ちるスピードは、秒速5センチメートルなんだよ」というところには、そのくらいゆっくりでいいから、彼に近づいて行きたい明里の想いが詰まっている。
この生活がいつまでも続くように願った中学校受験合格を決めたあとに、引っ越しがわかった。

明里パパは、定住を希望し、本社である栃木勤務を求めていた模様。
チャンスが多い東京に惹かれるものもあっただろうけど、家族的にはそれがいいですね。
だから、最後まで明里の実家は栃木。


引っ越しを貴樹に電話で伝えた晩に、貴樹が言った「もういいよ」の拒絶の言葉が明里の胸に突き刺さった。
だから、彼女は貴樹とギクシャクし、中学校に入っても電話をかけることができなかった。
それほど、人を恐れている面を持ち合わせている。

中学校に入り、貴樹という理解者、もう彼女らの間では自分の半身とも言える相手を失ったショックは大きく、明里は中学校生活になじめずにいた。貴樹は転勤族が持ち合わせている、どこでもなんとなくうまくやる処世術を持っているので、表面上問題なかった。
おかしなこと、辛いことが続き、何も感じないように過ごすようにしてきて限界に近づいた時、貴樹に手紙を書いた。

貴樹が感じたように、明里はいつも1人だった。彼も1人だった。
それほどまでにお互いが似通っており、2人は理解しあえていた


文通が支えとなったが、貴樹の引っ越しが決まり、こっそり会いに来る。
雪で電車が遅れ、彼を待つ中、明里は彼にラブレターを書く。
大好きと伝えたい。

彼も同じ思いだったわけで、まさにお互いが相思相愛で、半身であるとも言ってもいいものだと思う。


彼と再開し、キスした瞬間にすべてを悟る。

13年間生きてきたことの全てを分かち合えた。私たちはかけることのないひとつの存在だった。その一瞬だけ、私たちは完璧にお互いを理解できた

貴樹もそう感じたはず。

これは言葉では言い表せない。だから、ラブレターの大好きなんてことでは表現しきれないから、渡しても無駄だと思ったからこそ、渡さなかったようです。彼も同じ気持だろうと


映画でもこの時に貴樹のセリフが長く入りますね。
彼女も同じことを考えていたわけで、本当にお互いを完全に理解したということです。
彼にもラブレターは必要なかった。

別れ際に「貴樹くんは、きっと、この先もだいじょうぶだと思う、ぜったい!」と言った言葉は、転校してきたときに貴樹に言われた「大丈夫」で救われたお返しであり、彼の今後を祝福したかった。
明里は貴樹がくることで、生きているだけで常に感じ続けていた身の縮むような恐怖感が霧散したと表現してます。
彼は私を祝福するためにやってきたと。

彼ともう会えなくなるという喪失感がある一方で、彼がいるから強くなれる自分がいることも実感し、明里は生きる希望を見出します



映画やマンガから受ける印象とは全然違ってましたね。
2人が似た者同士で、本当の意味で理解しあえていたし、同じことを考えていたというわけですね。
こんな経験、、、ある人いるんかな・・・・? と思いつつ、ぼくの常識では測れない世界があったということでした。

だから、理解や推測を超えた先に答えがあったなと。
こうして考えると、どこかの日常のありふれた的なことが謳い文句でしたが、「ありえないな」と夢から醒める気持ちになりました。
そう、元々理解できない二人とその関係性だったと。


ちなみに。
明里は貴樹と会うことで、祝福され、他人の恐怖から解放され、前向きに生きていく希望を掴みました。
その逆に、貴樹は明里と会うことで、明里を思い続けること、この瞬間に囚われ続けることになるわけで、皮肉なもんです・・・。




2.コスモナウト

タイトルのコスモナウトはcosmonautで意味は、(特に旧ソ連軍の)宇宙飛行士のようです。
貴樹の将来の夢でした。
さて、2章は貴樹が昔を振り返った綴った文章になっています。

貴樹が岩船で明里に感じた思いは、明里と同じもの。
あの瞬間は「言葉」では到底表現することがかなわないもの。
だからこそ、彼と明里の中では暗黙のうちに神格化されて、触れてはいけない2人の秘密になっている。

貴樹が鹿児島に引っ越してからも、文通は続く。
あの日の見た世界の真実のおかげで、彼はあの体験の残滓をまた味わいたいと願うが、それは文章では表現しきれないものだ。
でも、あの日の真実には触れてはいけない、だからこそ、お互いの手紙には意味が見いだせない
だから文通はどちらともなく途絶えてしまった。

強烈な体験のおかげで、その刺激が欲しいが得られない、そんな渇望がある。
もうこの段階において、明里への執着ではなく、世界の真実への執着に変わっていったようだ


・・・まあ、正直、理解できないし、経験したこともない。
普通によくある遠恋で熱が冷めてしまったわけではない。。。うーん。。。


文通が終わり、少し安堵したという。
日々の現実の世界の影響で、明里の気配はまもなくして消える。

高校生になり、彼は夢を見るようになる。
映画でも描かれたように見た夢を携帯のメールに書き込み消す日々を続ける。

夢で見る世界は見たことがあるようで見たことがない世界。
出てくる少女の顔がはっきりしない。
彼はその世界に惹かれ、そこにいけるなら何を捨ててもいいとさえ思う。

もう彼が追いかけているのは明里ではない。
世界の真実に捕えられたまま、夢想するような日々だったのかもしれない


澄田花苗が好意を寄せてくるのに気づく。
そんな彼女のことに彼が興味を持ち始めたのは、夢で出会う少女が花苗ではないかと。
そのことを花苗に話したいけれど、話してしまってはいけない。葛藤がある。

踏み込んだり、踏み込まれてしまってはその世界が壊れてしまう。
花苗から告白されると理解した時、彼は告白しないで欲しいと願った。
そうすれば、花苗への興味は完全に失われる。

かたちにしてしまったものは、劣化するだけだ。かたちになるようなものは、ぼくは欲していない。
ぼくが求めているものは、絶対に言葉に変換することができないものだ。

花苗が「私を見ていない」と悟る。彼が見ていたものは、この世には存在しないものだったのかも。
幻想を追いかけ、幻想に囚われ、その女の子が誰であるかもわからずに。


ロケットが突如打ち上げられ、彼は悟る。
ロケットはぼくだ。ぼくが夢で見た場所は、ロケットが行き着く先にある。深宇宙だと。
だからタイトルがコスモナウトなのかな。

そして、彼は種子島にとどまってはいけないことを知る。

この部分を読むと、彼のメールが意味不明に幻想的なのも理解できますね
言葉に出来ないものを追い求めていたわけです。


彼は明里を追いかけていないし、彼女が好きだとかいう感情でもない。
あの日見た言葉に出来ない世界の真実が彼を囚えて離さなかった、という感じでしょうか。

・・・ますます理解できませんね。
普通の恋愛論からずいぶんと乖離してますので、いくら予想しても外してしまいますわな




3.秒速5センチメートル

大学生~30前までの貴樹と明里を第3者の視点で追いかけます。
2人とも東京の大学に進学し、一人暮らしをしていた。

貴樹は数人の女性と付き合った。
でも、恋愛だったのかはさだかではないような付き合いだった。

一方、明里は普通の女子大生になった。
もはや貴樹のことは忘れしまった過去になっている。

貴樹は社会人になり水野理紗に惹かれる。彼女の持つ家族の秘密を知りたいと思ったのがきっかけだった。
その秘密は彼女の兄が駅のホームで自殺したトラウマだった。
彼女はそこからうまく人間関係が作れなくなっていった。

貴樹は彼女が持つ秘密に引かれたわけで、恋愛的に好きだったわけじゃないと思う。
その証拠に彼女から「好きだと言って欲しい」と言われても言えなかった


何だ・・・この男は・・・となりますわね。。。
当然の結果として、別れのメールがきます。
「メール1,000回送っても、あなたには1センチくらいしか近づけなかった」って。

映画と同じ展開です。マンガの展開とは全然違いますので、マンガはもう一つのストーリーなんでしょう。

貴樹の反省を見ていると、ただの発達障害なのかなと思えます。
感情のやり取りが苦手で、人間関係をうまく築けないだけかな・・・



貴樹はSEになり、人と関わりが少なく、プログラミングに没頭できるので性に合っていた。
が、活躍すればするほどに、人間関係などのあつれきが生まれ始めて、どんどん重みになっていった。
それが元でキリがいいところ辞める。


明里は大手の書店に就職が決まり、しっかりと仕事をこなす。
仕事関係の人と出会い、結婚が決まる。名前は出てこない。
仕事も家事も両立する、とても素晴らしい人になってます。

荷物の整理で実家に寄った時に、手紙を見つけ、昔のことを思い出す。
貴樹のことは遠い思い出であり、かなり忘れ去ってしまったかのよう。
あの日、彼と最後に会った時に、彼から祝福されたおかげで、今まで孤独ではなかったしやってこれた。

彼から生きる力を与えてもらった、もしくは奪ったのではないかと思うほど。

桜の季節になり、街へ出かける。何かをしなければいけない気になった。


貴樹は仕事を辞め、ふとコンビニで立ち読みすると、高校生の時に見た打ち上げロケットが、8年かけて冥王星に到着したことを知る。
あのロケットは自分だ。
その時に悟った。

今、自分はここにたどり着いたのだと。
感動が全身を包み込んだ。
彼が欲しかった力がある。今なら何でもできると。

そう感じた瞬間に、色あせた世界が光り輝く世界に見えた


全身が軽くなった。
その後、彼はフリーランスとして働いた。性に合っている。
そして、春が来て、散歩に出かける。

踏切ですれ違う貴樹と明里。
明里が振り返ろうとした時に電車が横切る。
貴樹には横顔しか見えなかった。

が、突如として満ち足りた気持ちになり、身体の中に強い力を感じた。
彼は口元に笑みを浮かべ歩き出す。
二人ともお互いを認識しないまま。

彼女があの日彼から半身をもらったから、彼女はしっかりと生きてこられた。
彼は明里とすれ違うことで、その半身を返してもらい生きる力があふれてきた


という解釈なのかな。
それとも、明里が育ててきた力をお返しにもらったのかもしれませんが、

あの笑みはこういうことだったようです。


・・・。


最後に2人のラブレターの全文が載っています。




4.まとめてみると・・・

読み進めれば進めるほど、

普通の感覚ではない物語だったとわかります


貴樹と明里は問題を抱えた人間だった。
明里は貴樹から生きる力を与えられたおかげで一人前の人間として成長できた。

力を与えた貴樹は半分幽体離脱をしたような生気のない目をして、夢の世界に囚われて生きてきた。
社会人になり、夢の世界にぶっ飛んでいた意識は実はここにあったと気づき、現実の世界の戻ることができた。
そして、明里とすれ違い自分の力を返してもらい、ようやく一人前に戻れた


・・・・って話でしょうか。。。


やってられないわ・・・


ここまで熱心に読んでもらった方には悪いですが、こんなことに感情を揺さぶられていたかと思うと、



やってられないわ・・・


もう一度書いちゃいました。

なんかさ、、、30過ぎた人間にはさ、痛い・・・。以上。




終わりに

本書を読めば読むほどに、ただの恋愛小説であることが痛烈にわかってきて、「うーむ」という感覚が強くなりました。
スピリチュアルな話の展開にはさらに、、、あいたた・・・と思ってしまった。
そういう意味では「冷静と情熱のあいだ」の方がよっぽどの名作です。

2人が得た「あの完全なる世界の真実」は結局、明里は忘れ去って生きていったわけですし。
大人になった貴樹はそのことを考えもしない。
なんか、元を正せば、人付き合いが苦手な貴樹君の半生って感じします。

そもそも、2人はあの日から出会わず、しかも両者ともにお互いのことを忘れ、会いたいとも思わなかったわけですから。
過去の恋人だった程度であって、それを意味ありげにリンクしただけのような・・・。
貴樹がどうして立ち直ったのかも・・・なんだかな。。。

そういう意味で、文量があるのに説得力にかける話で、最後の最後で平坦で、尻すぼみに終わったなと。
漫画のほうがよっぽどうまくできていたなと思います。
パラレルワールドの話と捉えるといいのかな。


Amazonでカスタマーレビューを見ると世界観が壊れるとの描写もあり、ずいぶん拡大解釈した内容なのかもしれません。
辛口ですんません。続きは下記リンクより。では!

1.映画「秒速5センチメートル」に釘付けになった ネタバレ感想
2.マンガから読み解く、映画「秒速5センチメートル」 ネタバレ解説
今 → 3.小説one more sideから読み解く、映画「秒速5センチメートル」 ネタバレ解説
4.新海誠監督のインタビューから考える映画「秒速5センチメートル」 ネタバレあり
5.新海誠の小説から読み解く「秒速5センチメートル」ネタバレ解説
6.秒速5センチメートルの旅の終わり~映画、小説、漫画の総括をします。ネタバレあり

コメント

  1. デスモ より:

    こんばんは。インフルエンザで会社を休んでおりまして、こんな時は涙でウイルスを体外に排出しようと思い「泣けるアニメ」で検索したところ、秒速5センチメートルが目に留まり観てみました。
    ところが例の「猛烈に残るもやもや感」で病状が悪化しそうになり、これは何とかせねばという思いで、Moriさんの解説にたどり着きました。漫画→小説と読まさせていただきましたがMoriさんの分かりやすく面白い文面でのお陰で、もやもや感もすっかり晴れて体調も快方へ向かいそうです。ありがとうございます!
    私の映画の感想としては、ロケットが打ち上げられたシーンでその爆音・使命のスケールの大きさを目の前に貴樹が自分の悩みなんて何てちっぽけなんだろうと気持ちを切り替えるのではと思ったのですが、ストーリーは真逆で自分の思いをそのままロケットに乗せて宇宙の深淵にとんでっちゃったって感じでしたね。ウワーそうくるか、そして3話の終わり方、救いのない映画だなとその時は思いました。
    まぁ、漫画とセットでなら自分の子供が失恋したときに見せてあげれば救いになるかもしれませんね。

    • Mori より:

      こんにちは。泣けるアニメ・・・というよりも、ダメージを食らうアニメですね。。。
      マンガ、小説と読まれましたか、救いのない映画でしたね。
      本人が通常の主人公とは違い、とても打たれ弱い、引っ込み思案だというところがミソだったのかもしれません。

      インフルも心も回復に向かうといいですね