書評:あのお店はなぜ消耗戦を抜け出せたのか~これからの時代は究極の対面販売!?

最近、なんでもAmazonで購入しています。
安い、早い、品揃え豊富ですので。

こういうショッピングサイトがあるからこそ、「ネットは安く購入できる便利なもの」というイメージが浸透していますよね。
でも、お店からすれば薄利多売を要求されているようなもので、とにかく売りまくらなければ儲けが出ない状況に追い込まれているようなものです。
その競争に勝つためには、圧倒的な資金力が必要でおいそれとは追従できるものではありません。

本書「あのお店はなぜ消耗戦を抜け出せたのか~ネット時代の老舗に学ぶ「戦わないマーケティング」」では、そんな戦い方を否定し、時代にあった戦わない方法に焦点を当てています。

著者の中山進也さんは、楽天の初代ECコンサルタント9人の1人になる、2000年に「楽天大学」を設立するなど、ネットショップの道のプロです



1.Eコマースの流れ

Eコマースとはネットで売買することを指すようです、あまり馴染みがありませんね。
さて、このEコマースのスタイルは大きく2つに分かれつつあるそうです。

1つは「究極の自動販売機」型。
特徴は低価格、送料無料、スピード配送、品揃え、便利さに価値を追求するスタイル。
まさにAmazonとか、アクアで言えばチャームのようなものですよね。

もう1つは本書のテーマである「究極の対面販売」型。
接客コミュニケーション、店長の商品愛や専門性を活かした魅力的なコンテンツなど、楽しさの価値を追求スタイル。

前者は、競争相手がひしめく中に飛び込んでいき消耗戦を積極的に行っていくスタイルであり、レッドオーシャン。
後者は、競争を避けて、真似されにくい部分に特化したスタイルであり、ブルーオーシャン。


あのお店はなぜ消耗戦を抜け出せたのか

2.レモン部の取り組み

著者が面白い取り組みとしてまずあげているのが、「花ひろばオンライン」のレモン部という取り組みです。


ネットでレモンの苗木を売るだけなら商品ページを作ればいいだけですが、レモン部というものを創設したそうです。
レモン部にはルールがあり、「月に1回、レモンの苗木の写真を取り、成長日記を書いて顧問に送ること」
顧問は社長さんです。

そのレモンの苗木セットは現在8,100円(税込み)で販売されており、決して安いものではありません。
でも、その取り組みは現在第5期生を募集というところまで来ています。

レモン部の取り組みを始めると、「花が咲きました」などのコメントがくる、困ったときにどうしたらいいのかと相談が来る。
そうした活動がFacebookの部室の作成につながり、活発に情報交換がされるようになったそうです。

レモンの苗木がとんでもなく売れたかというとそうではないけれど、お店の売上はどんどん伸びていきました。
その元は、部員の人がこういうものを買ったといえば、それを購入してみたり。店長がおすすめをしたら、買ってみたり。

こうして、お金という価値じゃなくて、楽しさやつながりという価値を産んだのがこのレモン部の取り組みだったんですよね。
これが本書が目指す究極の対面販売ということです。




3.消耗戦を抜けるために

消耗戦を抜けるためには次の5つのことをやってはいけないとしています。

1)売れているモノを売ってはいけない
2)ターゲット客を攻略してはいけない
3)競合対策をしてはいけない
4)スケールメリットを強みにしてはいけない
5)勝つためのスキルを磨いてはいけない

これらの根底にあるのは、お客に何を与えるかです。

金銭的な損得よりも、経験・感動・楽しさ・共有という価値がこれから求められている

ってことなんです。
なんでお金と時間をかけてディズニーランドにみんながいくのかというと、そこでしか得られない価値があるからですよね。
その価値にフォーカスしなければ、これから支持されて生き残ってはいけません。

というのも、価格で競争するということは、お客はひたすらに比較をするってことです。
なんでAmazonで購入するかといえば、安い、早いからですよね。
もしも、Amazonの競合店が現れたら、そこで買い物するようになると思います。

もしも、お店の人と話すのが楽しい、自分の居場所があるとなれば、お店を比較などせずに、そのお店を指名するはずです
ネットではなくてリアル店舗で買い物するのはそこに価値をおくからですよね。

熱帯魚関連はチャームで購入することが多いのですが、でも、中野愛魚店には行くんです。
そこでちょっと割高かもしれないけれど、商品や熱帯魚を買ったりします。
実際にはネットですべて済むわけですけど、お店の人と話をするのが楽しいからこそ、リアル店舗に行ってしまうんですよね。

つまり、ネットでもリアル店舗と同じような価値を提供しよう

というのが、消耗戦を抜け出すためのポイントなんです。
だから、究極の対面販売を目指す。




4.気になった部分をピックアップ

1)
「買ってよかった」と思えるのは、コスト < ベネフィット が成り立つとき。
この式が成り立つためには、コストを下げるやり方とベネフィットを上げるというやり方があります。
当然、レモン部の取り組みは後者のベネフィットを上げるやり方です。


2)
30個で3,000円の商品を売るとして、お試し商品を作るときにはどうしますか??
もしも、「10個入り800円」と考えて、あえて割安な消耗戦を演じたとしたら・・・

そうした割安商品だけを狙うセールハンターに買われるだけで、お店は赤字になります

これが「お試し商品だから安くしなければ」の誤解です。
30個3,000円で気に入らなければ3,000円の後悔です。
それを10個1,500円と割高で販売した場合は、気に入らない場合は1,500円の後悔と被害を小さくすることができます。

なるほどと思いましたね。
安くすればいいと考えていましたが、それが消耗のもとですよね。
消耗しない価格設定でお試しを出す、アリですね。


3)
何のために仕事をしているのか・・・例えば、薄利多売をするときには、お客の顔は見えません。
その場合「おれはこんだけ売ったんだぜ」というお金、名誉のために働くことになりますよね。

その一方で、経験、共有などの価値を売ることをターゲットにしていると、お客さんからの喜びの声や笑顔がもらえます。
これがまさにお客の笑顔のためになりますし、生きがいを感じられるますね。
数値を追いかけるか、笑顔を追いかけるかでずいぶんと働き方が変わるはずです


4)
本書を読んでいるとやっぱり大事なのは、「コミュニティ」の存在。
人は誰かと繋がりたい欲求を持っています。
それをまとめたマズローのピラミッドを見れば、他者がどれだけ大事な存在であるかがわかります
参考 → マズローの自己実現理論ってやっぱりすごい。自分はどの階層で何を改善したらいいのか、考えてみよう

SNSが普及した現在では、このコミュニティはビジネスで切っても切れない関係になっています。
どのようにコミュニティを作り、参加するのが楽しいという仕組みを作るかがポイントになりそうです


5)
消耗戦になるのは、売れるものをみんなで売り、数字を競うからですよね。
そうではなくて、コンテンツを充実させるなどの手間がかかると真似されにくい、これって大事ですね。
ブログが支持される理由も同じです。

その手間から生み出されるものが共感や楽しさ、経験を生むんですよね。




終わりに

本書を読んでいると感じることは、「効率ばかりを追いかけてはいけない」ということです

ライフハックが流行って、それに則って「いかに早く、いかに効率的に、いかに無駄をカットできるか」を実践してみたら、

うまくいかなくないですか??


ライフハックって言葉がかっこよくて、それをしている人が成果をあげている(らしい)のを見ると、うらやましくて仕方がありませんよね。
でも、ここに落とし穴があって、職場では人がいます。
その人を無視するような時短では意味がないんですよね。

だから、うまくいかない。人間関係が悪くなる。そして、ますます仕事が面白くなくなる。
ライフハックのそもそもの目的が、自分の人生の生きがいとはかけ離れているからです

なんかこれって、本書のビジネスで儲かるために消耗戦に突入して数字や名誉を追いかけるのに似てるなと思ったんですよ。
でも、追いかけるべきは自分のライフワークであり、楽しさであり、貢献であるべきなんですよね。

ライフハックが悪いわけじゃなくて、そうした人の満足を意識したものが根底にない限りうまくいかないってことです。