睡眠を遺伝子研究から知る~時間の分子生物学(粂 和彦)

日々いかに効果的に睡眠を取り、効率的に時間を使うのか。
これが大きな興味であり、実用的な課題です。

今回は研究者が書いた本を手に取りました。


こんな本です

生物がもっている時間や睡眠といったことに分子生物学の観点から、どのように研究が進んできて、どのようなことがわかったのかをわかりやすくまとめたものです。
学問的ですが、とてもわかりやすく、興味深い内容になっています。

章構成は以下のとおり

 1.なぜ生物時計があるのか
 2.脳の中の振り子
 3.生物時計の部品の発見
 4.分子生物学が明かした驚異のしくみ
 5.不眠症のハエから睡眠遺伝子を探る
 6.睡眠の謎
 7.生物時計は睡眠をどう制御しているか
 8.睡眠研究の突破口-ナルコレプシー



こんな人におすすめ

・睡眠についてより知りたい人
・分子生物学について知りたい人
・生物が持っている時間について知りたい人


時間の分子生物学 時計と睡眠の遺伝子(粂 和彦)

感想

睡眠に関する部分を中心にレビューします

1.ハエも眠る

哺乳類になると、ああ、寝ているなってわかるのですが、昆虫の寝ているところは正直見たことがありません。
結論から言うと、ハエも寝るそうです。

ハエの脳が小さすぎて、脳波計で調べることはできませんが、行動記録を取るとたしかに動きが止まる、反応が鈍くなる周期があります。
その睡眠周期は研究者によってまちまちだそうですが、10~15分程度ではないかと著者は研究から分析しています。

横になりはしませんが、ジッとしていたらもしかします。
もちろん、太陽の動きと連動しますから、寝るのは夜が中心になります。

そして、脳の作りは人と違いますから、ノンレム睡眠といった寝方ではなく、原始的な眠りであろうと。
ハエが見ている夢とはどんなものでしょうか。

ちょっとだけ親近感がわきました。

ちなみに、生物の教科書にもよく出てきますが、ハエ(ショウジョウバエ)がなぜ研究のテーマになるかというと、孵化から成虫になるまでが10~20日と短く、大量の卵を生む、遺伝子的な操作がしやすいといったことがあるそうです。
研究として、たった1つや2つの例ではなく、大量のデータを集める必要があるというのが大きな要因で、犬などのサイクルが長い生き物では時間がかかり過ぎて研究できないようです。

ハエマニアが多いわけじゃないんです。笑


時間の分子生物学 時計と睡眠の遺伝子(粂 和彦)

2.朝日は生物時計を進め、夕日は生物時計を遅らせる

生物の器官には時計が備わっており、それがだいたい24時間程度だそうです。
それを概日リズム、サーカディアンリズムと呼んだりします。

仮に真っ暗な闇で生活したとしても、基本的なリズムはほとんど変わらず、ずれは少ないとのこと。
とはいえ、不規則な生活をする、外国に行くなどして体内時計がずれることがあり、そんなとき「太陽の光を浴びれば体内時計がリセットされる」といいます。

が、厳密には違うそうです。
朝の光は体内時計を進ませ、夕方の光は体内時計を遅らせる効果があります。

ちょっとだけ夜型の生活になった人、言い換えると2時間体内時計が遅れた人がいるとします。

午前7時の段階で、体内時計は5時。まだ寝ています。
午前9時の段階で、体内時計は7時。そろそろ起きようかなとなってきます。
夜は0時に寝るつもりでも、体内時計は22時ですから、午前2時まで起きているのが普通です。

「お前、太陽の光を浴びて体内時計をリセットしろよ! とりあえず、朝起きてみ!」
と言われて、朝眠いながらも起こされ、太陽の光を浴びるどうなるか。

体内時計が進みはじめ、2時間だった遅れが1時間になるといったようになってきます。
寝る時間が遅れた人ほど、朝に光を浴びるのが効果的と言われる所以です。

となると、朝日を浴びずに夕方に光を浴びる人の体内時計はどんどん遅くなるので要注意です。

ちなみに、どんなにがんばっても1日に4時間ぐらいまでしか、体内時計は修正できないそうです。
12時間も時差のある国に行くと、どうしても1週間位は時差ボケがとれないようですよ。

ブラジルへワールドカップに行くときは・・・1週間前からいくのが理想的??


時間の分子生物学 時計と睡眠の遺伝子(粂 和彦)

3.理想の睡眠時間は・・・

一番気になるのは、何時間眠ればいいかということ。

結論は出ていない、これが答えです。

おいおい、、、なんだよ・・・。
がっかりしますが、大事なのは朝気持ちよく目覚めて、日中眠くならなければいいそうです。

まあ、そりゃそうですね。
8時間神話は関係ないようです。

自分の感覚としては、7時間が境目の気がします。
だいたい7時間寝ればすっきり。
6時間台になると物足りなくて、それが続けば眠気も疲労も蓄積していく。
そして、6時間未満だと眠い・・・。

こういった自分なりの睡眠時間を探すというのが答えですね。


時間の分子生物学 時計と睡眠の遺伝子(粂 和彦)

4.昼寝をしよう

ヨーロッパの国では、シエスタといって午後1時~4時まで昼寝をとる習慣があります。
仕事中にですよ!!
シエスタの効果について、他サイトでこんな説明がありました。

自然な眠りの欲求に逆らわない適度な昼寝は、疲労回復やストレス解消に大きく効果があります。シエスタ(スペイン語で昼寝の意味)の習慣があるスペインやイタリア、あるいは地中海諸国や中南米の地域の人たちは、毎日昼寝をしていないアメリカ人や日本人と比較すると、のんびりしていてストレスが非常に少ない心身ともに健全な生活を送っています。
昼寝は人間にとって当たり前の習慣より



3時間昼寝を取ると、その分勤務時間が伸びてしまって午後8時までになりますが。
上記の会社はフレックスタイムを取り入れているので、昼寝をしなくてもいいし、映画などを見て過ごしてもいいそうです。

本書では、昼寝の利用によって脳がスッキリし、作業効率が上がり効果的として、おすすめしています。
日本的にはやはり、「15分から長くても30分」と言われている通り。

1時間の昼休憩があれば、食後に取るという感じですね。

午後からすっきり起きる工夫として、覚醒効果があるコーヒーを昼寝の前に取ることが有効だそうです。

さっそくやってみたいですが、寝過ぎ注意!


時間の分子生物学 時計と睡眠の遺伝子(粂 和彦)

5.眠気は睡眠負債-覚醒信号

どうしても襲われる眠気。
強すぎてよく負けています。。。

日中眠くないのは、体内時計が覚醒中枢に覚醒信号を送っているためです。
つまり、覚醒信号がなくなれば眠気がでてくるということ。

また、起きていると睡眠負債というのが溜まっていきます。
これが眠気のもとです。
たくさん起きていれば寝なさいというわけです

起きていれば睡眠負債で眠くなりますが、体内時計の覚醒信号によって、その分引き算されます。
結果、夜眠くなり、朝は目が覚めます。


徹夜をすると、ある時すっごい眠いんだけど、朝くらいになって眠気が覚めるのは、その人がすごいわけじゃなくて、ただ単に体内時計の覚醒信号の仕業です。
ちなみに、この睡眠負債は寝てあげないと返済できず、溜め込みすぎると普通に寝るだけでは足りなくなりますので要注意です。


時間の分子生物学 時計と睡眠の遺伝子(粂 和彦)

終わりに

学問的なものですが、わかりやすく書いてあり、最後まで興味深く読むことができました。
研究者が日夜果てしなく研究をしてくれているおかげで、現代の生活があるのだなと実感するとともに、研究というのは大変なものだと改めて思います。

本書は、違った視点で時間、睡眠というものを考えるきっかけになりますよ